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大きさとか低さとか
 モーリス・ラヴェル作曲の「ボレロ」という曲がある。「ボレロ」とは元々はスペイン発祥のダンス音楽の一種だが、今日ではこのラヴェルの「ボレロ」の方が有名かも知れない。題名は知らずとも誰もが聴いたことのあるこの曲には、いくつかの特徴がある。まず、最後の僅かな部分を除いて、たった2つのメロディがひたすら繰り返されること、そして曲全体がひとつの大きなクレッシェンド(徐々に大きくなること)で出来ている、などだ。
 冒頭、ほとんど聴き取れないほど小さな小太鼓と弦楽器のリズムから始まって、それが次第に大きくなり、終局ではあらん限りの大音量でなだれ込むように曲を閉じる。例えばカーステレオや歩きながらイヤホンなどで聴こうものなら、最初は全く聴こえず最後は鼓膜が破れる(かもしれない)という、全くもってBGMには不向きな曲である。

 さて、この「ボレロ」ほどではないにせよ、一般にクラシック音楽はダイナミック・レンジ(音量の幅)が大きい。それに対してポップス、特に近年のものはダイナミック・レンジが非常に狭い範囲に設定されている。ごく端的に言えば「小さな音がない」ということである。たとえ歌手がささやくように歌っていても、それは耳元で(更に言うなら鼓膜のすぐ前で)ささやいているような作りになっており、無音〜最大音量を0〜10とすると、現在耳にするポップスの多くはおよそ8〜10の範囲で作られているという。非常に狭い。こうなるともう「ダイナミック・レンジ」とはいえないような気もする。どちらが良い悪いというより、現代のライフスタイルでは、部屋の大きなステレオよりも携帯端末やカーステレオなどで聴く機会の方が多いだろうということで、このように作るわけだ。

 音量と同じく、音域というものにも、上はいわゆる「超音波」から、下は「超低周波」まで幅がある。これについても、ある音域を削ったり足したりということが──粘土細工みたいだが──可能である。近年すっかり見かけなくなったMD(ミニディスク)は、CDに比べて随分コンパクトだったが、あれはあのサイズに情報を収めるために、人間に聴こえない音域を省いてあるそうだ。イヤホンなどで聴く分にはあまりわからないが、大きなスピーカーで聴き比べると確かにCDよりも音が「薄っぺらい」感じがする。聴こえない音域とはいうものの、認識できないというだけで、実はけっこう聴こえているのかも知れない。

 逆にこの「聴こえない音域」を意識的に利用した怖い例もある。大戦前のナチスだ。
 ヒトラーの演説は夕方にされることが多かったというが、この時演壇の下部に仕込んだスピーカーから耳には殆ど聴こえない「超低周波」を流しながら演説したとものの本にはある。
 極端に低い音というものは、人を一種の催眠状態にする。ハードロック系のライヴなどでは限界まで増幅されたベースやドラムの低音を体に受け続けることで「音に酔う」ということがある。アルコールと同じく悪酔いするわけだ。日本の盆踊りでも櫓の上で大太鼓を叩くが、延々と続く踊りの列や、皮膚に直接響いてくる大太鼓の振動、実はこれらは「集団催眠」のための条件を満たすことになっているらしい。踊り続けるとハイになってくるというのは、一種の催眠状態に陥っているともいえる。
 ヒトラーの話に戻れば、時間帯は人々が仕事を終えて疲れている(いくぶん判断力が落ちている)夕方、そこに密かに流される超低音と断定調の演説、それらによって知らず知らずの内に「ある方向」へと誘導されてゆく群衆・・・・想像するとなかなか怖い。
「音」の利用法にも色々あるけれど、やはり平和や幸福につながるものであってほしいものである。


未分類 | 14:53:50

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