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涙の理由
彼女は泣いていた。

今にもしゃくりあげそうな表情で、目を赤くし乍ら手紙の文字を追っていた。
真っ昼間の電車内である。もちろん人目もある。にも拘らず、彼女は泣いていた。
余程悲しいことがあったのか、唇を固く結ぶようにして手紙を読んでいるところを見ると、失恋でもしたのだろうか。彼からの別れの手紙を読み進むうちに泣けてきたのかも知れない。

「今までの、君の全てに感謝している。ありがとう。さようなら」
・・・とか何とか、きっとネボケたことが書いてあるに違いない。どんな文面かは知る由もないが、誰の人生にもドラマのような瞬間があるものだ。
「そんな男のことはもう忘れてしまえよ。・・・僕じゃだめかい?」
女性が泣いていれば、事情はともかくそう慰めてあげたくなるのは僕だけではあるまい。
周りの乗客も彼女の方を見て見ぬフリをしている。こんな時にじろじろと顔を見るのは不躾というものだろう。・・・でも、気になるな。
そう思って、そっと彼女の方を盗み見た僕の目に、あってはならない光景が飛び込んできた。

彼女がアクビをしている。カバの如き大アクビである。虫歯治療のあとが目に眩しい。その偉大なる口を閉じると、ほどなく彼女は居眠りを始めた。

ナニナニナニ!?そんなアホな!!失恋したんとちゃうんかい泣いとったんとちゃうんかいドラマのようなワンシーンやったんとちゃうんかいエエ夢見たってや〜〜〜。

電車の中でフネを漕ぐたぁ、ふてぇ女である。
勝手にドラマティックな展開を作り上げていた僕の幻想は、木ッ端微塵に打ち砕かれた。彼女が読んでいたのはプリントアウトした会社の書類であり、折しも2月半ば、彼女は少し早めの花粉症患者であっただけなのだ。現実はかくもキビしい。

駅のホームからガラス越しに見た彼女の頭は、まだ傾いていた。

未分類 | 01:22:33

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