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オルゴール
 昔からオルゴールが好きになれない。「嫌いだ」と素直に言えないのは、音色や見た目そのものを嫌いなわけではないからだ。駆動部が外から見えるタイプならば、シリンダーの回転や、それにつれて金属の弁が弾かれる様を眺めていると、巧く出来ているなぁと感心する。パソコンなどの高度な機械は、その仕組みを想像することすらできないが、オルゴールくらいなら頑張れば自分で作れそうにも思えてくる。誠に平和なカラクリである。
 では一体オルゴールのどこが「好きになれない」のかというと、あの「ありよう」である。
 キリキリとネジを巻いて‥‥という機構上致し方のないことではあるが、はじめは元気一杯に奏でられていた曲が、段々にゼンマイが弛んでいって、曲の終わったところでならまだしも、ついには完結しないまま「ふつっ‥‥」と止まる。そして沈黙。あのありようが何ともやるせない。何かこう、志半ばにして倒れるような、そういった「無念感」とでも言うべき寂しさがつきまとう。
 書店や雑貨店に行くとオルゴールのCDを見かけることがあるが、あれはきちんと曲が完結するのだろうか?よりオルゴールとしてのリアリティを追求するのであれば、曲のテンポが徐々に弛み「がんばれ!もうひと声!」というところで憐れ力尽きたように止まるべきだが、そんなメンドウなことをするだろうか。謎である。

 そう考えてみると、あの「ふつっ‥‥」と曲が止まって訪れる、何とも言えず物悲しい沈黙こそがオルゴールをオルゴールたらしめているのであって、きちんと曲が完結したりすると、それはただのオルゴールもどきで、オルゴールの一番「オイシイ」部分を放棄していると言えるのかも知れない。しかし正にその部分が、僕がオルゴールを好きになれない理由である。

 もし力尽きたように止まった後で再び甦って動き始めるオルゴールがあれば、僕は涙を流して喜ぶだろう。死んだと思われたヒーローが実は生きていた、というのに等しい感動がそこにはあるに違いない。

 ‥‥‥気色悪いか、そんなん。

未分類 | 23:04:27

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