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肝ヲ試ス
 高校生の頃、同級生に「金持ち」がいた。当然親のものではあるけれど、「別荘」というものを持っている人間に初めて出会った。
 ある夏の日、同級生何人かと、かなり山奥に建てられたその別荘へ、泊まりに行こうということになった。
 男女高校生、人里離れた山奥、夏の夜、保護者ナシとくれば、ふっふっふ、することはひとつしかない。「肝試し」である。他にもありそうな気もするが、ここでは触れない。健全にいきたい。
 さて、男女がひと組になり、コースを決め、指定された場所に品物を置いて戻ってくる。次のペアはそれを取りにいく、というだけのものだが、それだけでは面白くない。やはりキモを試すからには「おばけ」が不可欠であろうというので、ぼくがオバケ役を買って出ることにした。
 
 自身がオバケであるのだから、何も怖いモノはないようなものだが、それでも「カモ」が来るまで夜の山で待つのはさほど楽しい行為ではない。真偽のほどは知らないが、ここ「六甲山」の名の由来は、戦国時代の武将の首が今も山中に「六つ」埋まっているから、だというではないか。そういうところで人知れず、いや、みんな知ってはいるのだが、暗闇にうずくまっていて、気持ちのいいわけがない。
 とは言うものの(どないやねん)他人を驚かすというのは誠に楽しいもので、武将のボーレーなどものの数ではない。「カモ」が通る道を見下ろせるように、斜面を少しよじ登ると、適当な茂みを見つけてぼくはうずくまった。手には巧妙な仕掛けを施したヒモ(どのように巧妙かは本筋に関係ないので触れない。それはそれはコーミョーなんだから)を持つ。

 待つことしばし。突然、ぼくの背後で「むっすぅぅんん」という奇妙な音がした。びっくりして思わず立ち上がりかけたが、なにしろ斜面の途中である。あやうく転げ落ちそうになりつつ振り返る。目が合った。
 --------------イノシシ、であった。デカい。先の奇妙な音はこやつの鼻息らしい。身動きひとつせずにそこに居続ける方もどうかと思うが、ぼくは目が慣れていないせいもあって、ひと休みしていたコイツの、文字通り目と鼻の先にしゃがみ込んだのだ。
 「ぶご」とヤツが言い、今度こそ僕は転げ落ちた。折しもペアでやってきた仲間が通りかかり、茂みから転がり出てきたぼくに驚き「ぎゃあああ」と叫んだ。ぼくは「いのいのいのいのしししし」と彼らに訴えたが、はるかに力強い彼らの叫び声に掻き消された。イノシシは騒がしさに嫌気がさしたか、のそのそと何処かへ消えていった。

 あなおそろしや。よく「猪突猛進」などというが、あれは全くのウソである。イノシシというものは、あれでなかなか小回りがきくということを僕は知っている(昔追いかけられたことがある)。そのことを彼らに訴えたが、とりあってもらえず、恐怖感の去った彼らの明るい笑い声が、夜の六甲山にこだました。

 いや、笑ろうてる場合やない。アブないねんから、ほんまに。

未分類 | 12:49:08

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