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ノックの音が
 早くすませようと思いながらも、楽譜を書いているとついつい深夜になってしまう。その日もいつものように近隣が寝静まった中、独り机に向かっていた。
 
 ぼくの住まうマンションの西隣には田畑があって、建物はない。4階なので割と遠くまで見渡すことができる。夏ともなると美しい夕焼けが見られる日も多いが、今はもう深夜ウシミツドキ、ブラインドを下ろしてせっせと譜面を埋めていた。

 どれくらい時間が経ったろうか、ふいにその目の前の窓から、コンコン、と、

 ・・・ノックの音が。

 机は西側の窓に面しており、つまり窓の外側にはなーんもないんである。鳥が止まれるほどのでっぱりすらない、のっぺりとした壁だ。折しも息抜きに坂東眞砂子の「死国」という小説を読んでいて、これは、土佐の土俗的な風習の残る村に、ある夏の盆、死んだはずの幼なじみが帰ってきて、そこいら中が甦った死者であふれるという、誠にユカイかつタイムリーな作品である。

 ボ、ボン、ボン、盆♪

 などと歌っている場合ではない。のののノックの音が。誰か帰って来はったんやろか。ひぇえ~。
 ・・・空耳だ、空耳。ソラミミ、ドレミ。いや、こんな明瞭な空耳などあるものか。コンコンッていったじゃないちゃんと2回鳴ったじゃない虫や鳥がぶつかったんなら羽音も聞こえるはずじゃない。
 マンションの4階にある窓をノックできる奴はスパイダーマンかバットマンくらいであろう。しかし彼らはたしか米国在住のはず。そぉ~っとブラインドを開けて窓の外を見ると、血まみれの女の子が虚ろな目をして宙に浮いており・・・などということはもちろんなくて、ただいつものように平和に町が眠っているだけだ。実に不愉快だ。


 星新一に「ノックの音が」という短編集がある。これは全編「ノックの音がした」という一文から始まるのだが、ノックの音というのは想像力を掻き立てるものがある。特に夏の深夜、独り自室で伝奇小説を読んでいるときなどには。
 夏目漱石にも「こんな夢をみた」で全編が始まる「夢十夜」という作品があるが、思わずその後の展開を想像してしまうという点では共通するものがある。ぼくの場合、えてしてあまり心楽しい想像にはならない。ノックの音がして、ハッピーな微笑ましいことが起こったってしょうがない。やはりそこに何らかのトラブル、不可解、魑魅魍魎など「歓迎できない」ものがなければ話として面白くない。しかしそれはあくまでフィクションの話である。現実的にはできることなら、

 「ノックの音がした。窓を開けてみると幸運の女神が、微笑むどころか腹を抱えて笑っていた」と、こういきたい。

 ・・・どこが現実的やねん。ははは。


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未分類 | 12:31:46

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