スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


スポンサー広告 | --:--:--
アツい記憶
 花火の想い出。
 小学生の頃、夏休みといえば祖父母の家に泊まりに行くのが恒例になっていた。近所の子供達は夜になると広場に集まり、悪ガキも良ガキも一緒になって、キモだめしに花火にと興じていた。
 ある夜、いつものように花火の最中、大物が一発欲しいというので吹き上げ花火(その名もドラゴン)をすることになった。ぼくはこれを砂場の真ん中に立て、導火線を引っ張り出して点火した。サッと離れて見守ること数分、一向に火があがる気配がない。説明書きには「固イ平ラナ地面ニ置キ、点火シ、素早ク五メートル以上離レテ下サイ。数秒デ噴水ノヨウニ・・・」とあったのだが。
 点火責任者として事態を看過できないぼくは、意を決してウンともスンとも言わないドラゴンに近づいた。ここで水でもかけて処理すれば、悲劇は起こらずに済んだのだ。今とは違ってまだ愚かだった幼いぼくは、よせばいいのにドラゴンを真上からソォ~ッと覗き込んだ。その瞬間。

 んひゅぼぼぼうっ

 景気のいい火柱が愚かなぼくの端正な顔めがけて噴き上がった。ニブいぼくはこれを避けることもできず、顔面いっぱいにドラゴンの集中砲火を浴びることになった。
 何か重大な場面に出会ったとき、時間がスローモーションのように感じられることがあるが、この時が正にそれであった。ワッと大輪の花のように広がる火を顔面で受け、
「あ。燃える」
 と思って離れた瞬間までが妙に長かった。

 驚いたのは周囲の子供達である。顔を火柱に突っ込んで硬直している友達を見れば誰だって驚く。当時一番仲の良かった「カー君」が真っ先に我に返り、ぼくを慌てて外灯の下へ引っ張って行った。泣きじゃくるぼくの顔を不安げに覗き込んだカー君だったが、涙と煤と鼻水と涎でわやくちゃなぼくの顔を見るなり、「へにゃっ」を顔を崩したかと思うと、あろうことかぼくを指さし、腹をかかえて笑い転げるではないか。余計に悲しくなったぼくは、力の限り号泣しながら、階段を駆け上がり、祖父母の家に駆け込んだ。
 鏡の中にはとんでもない顔があった。
 煤と涙と涎で顔中「カムフラージュした陸軍兵士」のそれになっており、所々ちりちりパーマになった髪がデーモン小暮閣下の如く逆立ち、その前面は白く焼け焦げ、異臭を放っている。祖母は「まぁまぁまぁまぁ」と言い、祖父は「花火を覗きこむとは何事か!たわけ!」と仁王のように怒った。
 ぼくは三たび号泣した。
 カー君を責めはすまい。これを見て「笑うな」という方が間違っている。オモロイもんは誰が何と言おうとオモロイのである。
 この話をすると、ぼくの頭を見て「ははあ、なるほど」というような顔をする割に失礼な人が時々いる。
 
何が「なるほど」じゃい。

スポンサーサイト
未分類 | 00:32:57

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。